IT企業が、自分たちで和カフェをやっている理由
「IT企業なのに、どうして飲食店を?」これは、私たちがよくいただく質問です。たしかに、複合機の見直しやWeb制作をしている会社が、和カフェ・ごはんの店「ことの葉」を営んでいると聞くと、不思議に思われるのも無理はありません。けれど、私たちにとっては、この二つは思いのほか地続きでつながっています。
きっかけのひとつは、飲食店向けのサービスを作るうえで、「現場を本当に分かっていたい」という思いでした。原価の計算や数値の管理を支える道具を作ろうとしたとき、外から眺めているだけでは、どうしても見えないものがあります。仕入れの読みにくさ、忙しい時間帯の慌ただしさ、閉店後にようやく数字と向き合う疲れ。こうした手触りは、自分たちで店に立ってみて初めて分かるものでした。
実際に店をやってみると、想像以上に学びの連続でした。机の上では「こうすれば効率的」と思えることが、現場では人手や時間の制約でうまく回らない。便利だと思って導入した仕組みが、忙しさのなかでは結局使われない。こうした「理屈と現実のずれ」を、身をもって何度も経験しました。これは、お客さまの店を支える仕事をするうえで、何より大きな財産になっています。
私たちが作っている「のびしろシリーズ」のような飲食店向けの道具に、現場目線が宿っているとすれば、それはこの経験のおかげです。「この機能は、忙しい時間帯にも本当に使えるか」「不慣れなスタッフでも迷わないか」。そうした問いを、自分たちの店で日々確かめながら作れること。これは、外から想像して作るのとは、やはり違うと感じています。
もちろん、飲食店の運営は片手間でできるものではありません。料理を出し、お客さまを迎え、季節ごとにメニューを考える。それ自体が真剣な事業であり、決して「実験のため」だけにやっているわけではありません。「ことの葉」を訪れてくださる方に、きちんと心地よい時間を過ごしていただくこと。それが第一であることは、言うまでもありません。
本業と飲食、一見すると遠く見える二つの取り組みは、私たちのなかでは「現場を大切にする」という一点で結ばれています。お客さまの困りごとを、外から眺めて分かったつもりにならず、できるだけ自分たちの肌で知っておきたい。その姿勢のひとつの表れが、この和カフェなのです。
